「リーマン博士の大予想」 表紙
堅い!堅すぎるデザインの表紙である!しかし、内容は非常に面白い。これだけ楽しめる数論解説書というのも、そうは無いであろう。おススメである!


■リーマン博士の大予想 (2005/10/22)

 数学界の超難問として有名な「リーマン予想」について、おそらくこれほどやさしく解説した本は無いであろう、好著である。数学はキライ!という人には、どうしようもないが、数学はできなくてもある程度興味は有る、という人にとっては、とても楽しめる内容となっている。著者のカール・サバーは、これだけ難しいテーマを、驚異的にわかりやすい解説で説明している。ある意味、これは複雑な数式を用いて説明するよりも、数段難しい技であろう。2004年12月、第一刷発行。紀伊國屋書店刊。2,500円也。

 とはいっても、本書の内容は、リーマン予想の数学的証明の内容について、詳細に述べたものでは無い。それに取り組んでいる世界中の数学者を、インタビューを中心として紹介した内容になっており、要するにこの本は、人間ドラマと言えないこともない。それだから、数学初心者でも十分に楽しめる内容になっているワケだ。反面、数論研究者など、有る程度数学的素養を持っている専門家の方には、若干物足りないのかもしれないな。。。

 でもって、リーマン予想とは何か?というと、素数に関する問題である。元々はガウスが14歳(!)の時に発見した「素数定理」に端を発しているが、それはある値以下に含まれる素数の個数を示す数式のことだ。しかし、14歳でこんなこと考えるか?フツー・・・。最初、ガウスはとてもシンプルな「近似式」を見いだしたが、ガウスの弟子であるリーマンは、より正確な個数を求めるべく改良を重ね、これを「リーマン予想」として公表した。これはあくまで「予想」であり、未だ「証明」はされていない。

 リーマンが見いだした、ある値以下の素数の個数を求めるための予想式には、ゼータ関数(ζ(s))というものが入っている。この関数は複素関数であり、ζ(s)の値がゼロとなる点をリーマンの零点と呼ぶ。このリーマンの零点が、ある特定の「予想線」上に乗っかっていことを証明できれば、ある値(自然数)以下素数の個数を正確に把握することができる、ということになる。なにやらワケがわからんが、要するに数学者たちは、このリーマンの零点が予想線上に乗るということを、必死に証明しようと努力しているのである。

 この問題は、実に150年もの間に渡り、解明されていない。それどころか、現在では懸賞金までかかっているというすさまじさだ。各国の数論学者は、こぞってこの問題に取り組んでいるが、まだ見通しは立っていないようである。しかし、カール・サバー曰く、2004年現在では、「ビーベルバッハ予想」という難問を証明した数学者、ド・ブランジュという人が、かなり「近い」ところまで到達しているようなのである。しかし、この人、随分と頑固で一匹狼的なことろがあるようで、同業の数学者からは、あまり印象が良くないようだ。。。
(´ヘ`;)

 といった感じで、純粋数学領域というよりは、各数学論者がしのぎを削っている様子にスポットを当て、数学界の超難問を身近に感じさせる工夫が取り入れられている。数論の堅い本であるにもかかわらず、一気に読ませる面白さを持つという点で、これは傑作だと思うよ。
ヽ(´ー`)ノ

 最後に、本書に掲載されている、クレイ研究所のホームページに掲げられたリーマン予想問題についての説明文を引用しておく。とても簡単な記述で、これが世紀の難問とは、とても思えない。。。
ヽ(`Д´) ノ

 【ある数には、自分より小さな二つの数の積としては書けないという特別な性質がある(たとえば、2、3、5,7など)。そのような数は素数とよばれ、純粋数学と応用数学の両方で重要な役割を果たしている。これらの素数が自然数全体のなかでどのように分布しているかを調べても、規則的なパターンは見いだせない。けれどもドイツの数学者G・F・B・リーマン(1826 - 1866)は、素数の相対頻度が、リーマンのゼータ関数とよばれるある複雑な関数ζ(s)のふるまいと密接な関係にあることに気が付いた。リーマン予想とは方程式

 ζ(s)=0

 の興味深い解がすべてある直線上にのっているというものである。このことは始めの十五億個の解については真であることが確認されている。もしすべての興味深い解について真であることが証明されれば、素数の分布をめぐる多くの謎に光りが当たることになろう。】


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