TIの486互換CPU
珍しいTI製486DX2-80MHzと486DX4-100MHzのCPU。DX2はマトモな外観であるが、DX4のカラフルなこと!TIはホントにこんな石作ってたのかな?パチモン臭ささえ感じられる逸品。


■変な石大会。TIのCPU (2005/09/03)

 e-Bayで落としたTIのCPUが送られてきたので掲載する。ついでに、筆者コレクションの中から、「変な石大会」と称して、そこそこ珍品と思われるものも紹介しておこう。486CPU全盛期には、本家intelの他にもAMD、Cyrix、TI、ST、果てはチップセットメーカーとして有名なUMCに至るまで、様々なメーカーが互換CPUを世に出してきた。これらは、クロック設定や動作電圧が微妙に異なるため、マザーボードのジャンパ設定が結構面倒だったのを記憶している。余談だが、当時のマザーボードは現代の物と異なり、プラグ・アンド・プレイでは無かったため、使用するCPUによってジャンパを設定するのが常だった。筆者が使用したマザーのうち、最もジャンパ設定が多かったものは、AIR製486VPである。このマザーには、ナント!80個以上のジャンパピンがあった・・・
ヽ(`Д´) ノ

 閑話休題。筆者は486時代から、主として本家intel純正を使用してきており、あまりセカンドソース品には手を染めたことは無かった。今回取り上げたTI製CPUは、OEM専用の製品ということもあり、一般のショップでは販売されていなかった。そのために知名度は悲しいほど低く、実物も滅多にお目にかかれない。。

 本家intelは、1989年に486-50MHz、1992年に486DX2-66MHz、1994年に486DX4-75MHz、そして1996年にはライトバック・メモリ・キャッシュを内蔵した486DX4-100MHz CPUを矢継ぎ早に発表してきた。TIの486DX2及び486DX4 CPUは、これらの製品の互換品であるが、DX2-80MHzというクロック構成は面白い。詳細はようわからんが、察するにバスクロック40MHzと、intel製品よりも高く設定されていたようである。TI 486DX4-100MHzは、最初8KBの内蔵キャッシュを搭載していたが、後に16KBに拡張された。なお、TIがintelの互換CPUをリリースし始めたのは、1992年の486DXからであったそうだ。

TIの互換CPUが梱包されていた箱の外観 #1
e-Bayの記述ではアメリカ出品となっていたのに、送られてきたのは「中国郵政、蘇州南通」のスタンプが押された小さな箱。。。なんでやねん?

TIの互換CPUが梱包されていた箱の外観 #2
で、その箱に押されていたスタンプ。送料14人民元?!

 さて、今回掲載したDX2-80MHzとDX4-100MHzのCPUであるが、まあDX2はまともな外観であるのだが、DX4については、異様にカラフルである。恥ずかしながら筆者はTIのDX4-100MHz CPUを初めて見たのだが、こんな色しているとは思わなかった。言い方は悪いが、何かパチモン臭い。完全に余談になるが、486DX4-100MHz CPUは、e-Bayでは出品地アメリカと記載されていた。ところが、いざ届いた小包を見ると、「中国郵政、蘇州南通」のスタンプが押されている。なんでやねん?って思わず叫んでしまったのだが、どうやらアメリカと偽って中国から出品していたようなのだ。あるいは、アメリカにエージェントがいて、彼が中国へ指示を出して直送させたか。。。

 まあとにかく、石も梱包も送付元も、全て怪しい一品である。で、どうでも良いことなのだが、この「蘇州南通(Nantong)」という所がどこなのか、調べてみることにした。場所は上海の近傍、長江沿岸の都市である。筆者は上海と蘇州市には行ったことがあるが、南通は聞いたことが無かった。どのような都市なのかは不明であるが、近くに空港があることや長江沿いということもあり、物流拠点としての機能を果たしているのであろう。なお、ついでに例の「NASA World Wind」で南通上空の模様を調査したので、下記に掲載しておく。。。って、すっかりCPUの話題から外れてしまったよ・・・

蘇州南通市の位置 #1
本題とは外れるが、蘇州南通市の位置を「NASA World Wind」にて調査してみた。上海市の近傍、長江沿岸に位置している。

蘇州南通市の市街
南通市の上空写真。このCPUはこの都市から送られてきたのだなあ。。。

 さて、ついでに筆者宅押入奥深くより発掘されてきた、石器時代の石(CPU)をご紹介。まず最初は、STマイクロ社製486互換CPU、ST486DX4-100とCyrixのMediaGX GXm-233GPの2点。STマイクロ社の486互換CPUは、俗に言う「第四世代CPU」であり、基本的にはintelの486DX4-100MHzと同等である。「It's ST 486DX4-100」というユニークな捺印が特徴。なお、本CPUは、STに勤務するK浦氏のご厚意により入手できた。日本では全く知られていないCPUの一つと言える。

 Cyrix Media GXは、一時期かなり有名になった。当時intelが発売したMMX Pentium(P55C)の向こうを張り、同社オリジナルのMMX機能を搭載したCPUで、ビデオ・サウンド機能を統合していたものである。intelのMMX機能は、画像、音声再生等のマルチメディア処理の高速化のために付加された機能で、全57の命令セットから構成されていた。intel MMX CPU(P55C)では、レベル1キャッシュメモリを32KB搭載していたが、Media GX CPUでは、確か64KBに増強されていたような記憶がある。このCPUは233MHzの動作クロックであるが、ベースクロック66MHzの3.5倍の設定となっている。Media GX CPUには、ここに掲載したGXm-233のようなPGAタイプの他に、GXI-180BP、GXI-166BPといったBGA(ボール・グリッド・アレー)タイプのものも存在し、マザーボードに直接搭載されていた。この石は今でも筆者仲間の間で話題に上る。飲み会とかで盛り上がって来たとき、「そう言えば、Media GXなんてのもありましたなぁ・・・」などと、酒の肴にしておるのだよ。
ヽ(´ー`)ノ

ST MicroのIt's ST 486DX4-100 CPUと、CyrixのMediaGX CPU
STのCPUは本当に珍しい。一方、Media GXは、MMX Pentium全盛期には、良く目にした製品である。PGAタイプの他に、BGAタイプも存在した。

intel i487SX CPU
486SX CPUを乗っ取って動作する、ちょっと変なCPU。

 こちらはグっとメジャーにはなるが、やっぱ変な石だった、intel 80487SX CPU。この石は、i486系に用意された、いわゆる「数値演算コプロセッサ」である。しかし、従来の8087や80387といった数値演算コプロセッサとは、若干動作が異なる。元々、i486DXプロセッサは、数値演算機能を内蔵する形で開発されてきており、「外部数値演算コプロセッサとの通信機能」は入っていない。予め数値演算コプロセッサが入っているi486DXを使用する分には問題無いが、入っていないi486SXに数値演算機能を付加するためには、このi487SXを増設用専用ソケットに挿入する必要があった。i487SXは、なんのことは無い、i486DXと同等のCPUを内蔵しているので、i487SXを増設した場合には、従来入っていたi486SXは動作を停止し、全機能をi487SXに委ねてしまう。まあ、CPUの乗っ取りでつな・・・

 因みに、intelの486系CPUは33MHzのDX、66MHzのDX2ときて、次が100MHzのDX4となっている。33MHzの3倍の動作クロックで動作するのに、当時なぜDX3という名称でないのか?と、当時疑問が湧いたものだった。これは、初期ロットには2.5倍の倍率を持ったロットも存在しており、単に3倍だけでは無いから、とうのが理由らしいが、そう言われてもようワカラン。。。ところで、intelでは、正式名称を「i486DX4」から「IntelDX4」としている。これも当時話題となったオハナシで、数字と記号の羅列では商標権を主張できないことが理由だった。

8086 CPU(セラミック・パッケージ)
intel純正じゃなく富士通のセカンドソース品。MBL8086 CPU。1983年19週製造のセラミックパッケージ版。

 x86系CPUの元祖といえば、やはり8086 CPU。この石は、数年前に、秋葉原では有名なコアなジャンク屋で購入したもの。intel製では無いものの、セラミックパッケージの8086は珍しいので購入した。ちなみにこの石、ショップ入り口近くに設けられた、すごく乱雑なショーウインドウ(判るヒトには判ってもらえると思う)の、最下層部分に堆積していたのを、無理くり発掘してもらったものだ。価格は、有って無いようなもんだったので、「いくらですか?」「いくらにしまショ?」といった会話で交渉した覚えアリ。これじゃまるで、平和島で四半期に一度開催される「全国古民具骨董市」の世界だよ・・・
ヽ(`Д´) ノ

UMC GREEN CPU
チップセットメーカーとして有名な、台湾UMC社が発売した、486互換CPU、「U5S-SUPER33」。「Not for U.S. sale or import」の文字が映えるぜ!!!

 長くなっちゃったけど、最後はコレで〆。究極の変態CPUである。チップセットメーカーのUMC社が1993年に開発した、U5S-SUPER33 GREEN CPU。さすがにこれは日本にはほとんど入って来なかったようだな。筆者は、当時良く遊びに行っていた、PC CHIPSのピーターさんから、この石を頂いた。しかし、表面捺印に「Copyright 1993 UMC」とあるくせに、なぜか「Not for U.S. sale or import」という文字も見える!曰く有り杉の製品だ。筆者は当時、486DXの代わりにこの石を使ってみたことがあるが、CPU BENCH等のベンチマーク値が、若干上がったような記憶がある。

 こうしてみると、486時代からSocket7にかけては、各社色々なCPUを作っていて、楽しいもんだったよなぁ・・・

 合掌!


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