■納車! (1999/03/21) 

●1999年03月21日(日曜日)
 FIAT 500L 納車の日である。
 1998年11月15日に購入契約を行ってから、実に126日が経過したことになる。実車を拝むのは今日が初めてなので、若干緊張していた。
 正午過ぎに吉祥寺のショップに向かう。天気はあいにくの曇り空で、時々雨がぱらつく肌寒い日となってしまった。ショップの店頭には、購入したFIAT 500Lがちょこんと駐車していた。アイボリー222番の外装は思ったよりも良い色で、まずは一安心である。

【2014年の追記】
記念すべき納車の日はあいにくの雨で、肌寒い日になった。筆者は、記録用のデジカメとして、KodakのDC260を持参し、ショップに向かった。午後1時前にはショップに着いたのだが、なんのかんのと最終的な調整を行ったので、実際に乗車したのは午後4時を過ぎていた。デジカメを持って行ったにも関わらず、撮影した写真がたった3枚というのも、当時の慌ただしい状況を現している。コーフンしていたのだ。写真撮るどろこじゃなかったのだ。それほど夢中になっていたのだ。


初めて撮影した「自分の」FIAT 500の写真。1999年03月21日午後4時58分撮影。Kodak DC260使用。元画像は1152×768ピクセル。f値3.6。露出1/177秒。

先ずショップに入り、店長さんから色々と注意事項を拝聴する。ブレーキは一系統しかないため、ブレーキフルードの漏れには特に注意すること、スターターモータは連続して10秒以上回さないこと、ガソリンタンクは満タンを避け半分程度にしておくこと、等々の基本的な注意事項を受けてから、エンジンの始動方法について説明を受ける。エンジン始動は一種の儀式のようなものであり、下記8項目の手順を踏むことになる。

 1.クラッチを踏む。
 2.ギアがニュートラルになっていることを確認する。
 3.イグニッションキーをON側に回す。この時、メーターパネルの G(チャージランプ)と PRESS(オイルプレッシャー)が点灯することを確認する。
 【これらは、エンジンをスタートさせると、通常時消灯する】
 4.チョークをそっと1/3ほど引く。  5.アクセルを2〜3回程度軽くあおる。
 6.スターターノブをおもむろに、やさしく引く。
 7.エンジンが始動したら、少しアクセルを踏んで回転を整える。
 8.回転が落ち着いてきたら、チョークを少しずつ下げながら、エンジンの良好な燃焼を意識しつつアイドリング状態に入る。

 以上の一連の操作を行うことによりエンジンを始動させるのであるが、最初はもちろん覚えられないので、手順をコピーして、それを見ながら行うことにした。しかし、「チョークをそっと引く」とか、「スターターの部をおもむろに、やさしく引く」といった表現が香ばしいなぁ。とりあえず、エンジン始動から挑戦してみる。


ショップの前に駐車したFIAT 500。

 エンジンの調整はかなり良く、セル一発で始動する。排気ガスも正常で機関の基本的な部分は問題なさそうだ。とりあえず、そこら辺を試乗してみることにした。小雨まじりの中を井の頭通り→五日市街道と走ってみる。ブレーキは思った通り、かなり思いきり踏み込まなくてはならない。サーボ付きブレーキに慣れている今のクルマのユーザにとっては、このブレーキのダイレクト感、重さにかなりびっくりする。心配していたミッションは、シンクロが無い1速でも、ダブルクラッチを踏めば問題なく入る。ただし、2速に入れる際に、若干ギギっという音がしてしまう。これは後になって、1速から2速に入れるタイミングが速すぎるためと判明した。1速を抜いてから2速に入れるまで、一呼吸置くことで、ギアの鳴りは押さえることができる。ちょっとしたコツである。
 運転開始時は、国産車のクセがついつい出てしまい、左手でシフトノブを探しに行ってしまう。しかし、20分くらい運転すると、かなり慣れてくる。走行中にスピードメーターが機能していないことを発見した。0を指したまま動かない。どうやらメーターが壊れているようである。ショップに戻って店長さんに話し、すぐにメーターを交換した。
 最初に付いていたメーターは、確か走行距離が7万km程度を示していたが、交換したメーターは一回りしたもので、9,695kmとなっていた。


ショップの前に駐車したFIAT 500。良く見ると、ドアミラーが左側しか付いていない。これは、ミラーの準備が間に合わなかったためだ。応急処置で、ショップの片隅に転がっていたミラーを仮留めする。本国イタリアでは、ミラーは運転席側に付いていれば、反対側は不要というハナシも聞いたことがある。

 メーターを交換した後で、再度試乗を行う。今回のメーターは時速20キロ以下でも安定した指針を示しており、なかなか好調であった。ショップに戻り、店長さんから各部の調整方法について、簡単な手書きマニュアルを頂く。とはいっても、整備については素人なので、チンプンカンプンの部分も多い。念のため、予備のヒューズとタイミングベルト、予備のスパークコードを頂く。ヒューズはVWビートル用のものが流用でき、色々なアンペア数の詰め合わせがオートバックスなどで250円程度で売っている。なんでもイタリアでは、ヒューズが飛んでもメンドクサイので針金で結線してしまう猛者もいるそうである。FIAT 500のキーは3本構成となっている。1つはイグニッション用で、プラスティックの柄が付いたもの。残りの2本は、運転席側と助手席側のロック用で、左右で異なるキーを使用している。こんなにキーの多いクルマは、生まれて初めてだ。


FIAT 500Lのキー(3本組)

 一連の説明を受けてショップを出たのは午後4時を過ぎていた。近くのロイヤルホストで遅い昼食を取り、自宅の車庫へ帰還する。あいにくの雨であったため、あまり乗れなかったが、今後のお楽しみとする。しかし、格好が格好だけにかなり目立つようで、対向車や通行人の目を良く引くようだ。中には指をさしている人もいたりして、ちょっと恥ずかしい。かなり緊張したが、とりあえず納車初日は無事帰還することができた。
 しかし、お彼岸ということもあり都内の道路はどこもすごい渋滞で参った。車内に神田明神のお守りを取り付ける。自宅カーポートに停めておいたら、向かいの家のご主人がしげしげと見に来たそうだ。やはり、珍しい車なのであろう。
 なお、今回購入したFIAT 500Lは、マフラーとボンネット、タイヤ、バンパー類、幌は全て新品が使用されていた。サイドミラーは、かませ式の在庫が無かったので、後日入荷したら取り付けることにした。
 少し乗ってみてから、以下の整備を行うとのことであった。

 1.タイミングチェーン交換(エンジン音が静かになる)
 タイミングのセッティングに遊びが無くなる
 2.バルブ調整(エンジン音が静かになる)
 3.ウインカーリレー交換
 4.オイル交換。この際にドライサンプのクリーナーを掃除する。また オイルパンを取って掃除を行う。
 5.タイミング調整
 6.ドライブジョイントの交換およびグリスの塗布

 上記の整備は、夏もしくは秋に行うのが良いとのことであった。

【2014年の追記】
何事も最初というのはタイヘンだ。上述したように、エンジンの始動方法でさえ、メモを見ながら行っていたほどである。それが今では手足が勝手に動くようになった。キーの本数が多いことにも驚いたが、これは旧車乗りにはアタリマエのことだ。恥ずかしいことに、初めて自分の車に乗った際に出た最初の質問は、「ギアをリアに入れる方法」だった。それすら知らなかったのだ。
当日の試乗では、小雨が降る中ではあったが、実に強烈な印象を残した。運転しながら笑っていたのを覚えている。それほどのインパクトがあった。ドアミラーの準備が間に合わなかったので、ショップにころがっていたボロボロのミラーを、ガムテープやら何やらを駆使して仮留めしたことも、今となっては良い思い出だ。
近日中の整備項目として6項ほどが記載されているが、今考えると、本来ならば納車時に済んでいてしかるべき内容かもしれない。早く乗りたかったということもあり、ショップの方も日程を優先されたのだと思う。
人生において、新車の納車というのは、そう何回も有ることでは無い。しかも、1971年製造のFIAT 500ともなると、一生に一度の経験である。(もっとも、5回以上乗り継いだRandy氏のような変わり者も、いることはいるが・・・)。当日の経験は筆者にとって、タイヘン貴重なものとなった。
なお、この個体の実走行距離だが、交換する前のメーターが7万kmを示していたことから、おそらくはそれくらいだったのだろう。もしかしたら17万kmということも有りうるが、そうなるとちょっと走りすぎだ。納車時に、どの程度走り込まれたエンジンだったのかは、不明のままである。
また、1速から2速へシフトアップする際の、ギア鳴りについての記載がある。この時は単にシフト・タイミングの問題として片づけてしまっていたが、後々2005年に、現在の主治医であるオンタリオSSさんで、ミッション系のオーバーホールを実施したら、症状が全く出なくなってしまった。このことから、納車時には既にミッション系にガタが来ていたと思われる。




<< Menu Page



Copyright (C) Studio Pooh & Catty
1996-2014