KMZ社の一眼レフであるZENITシリーズは、1951年にプロトタイプを出し た後、1953年から本格的な量産に入った。以後現代に至るまで、ZENITシ リーズは多くのモデルが発売されている。ここに取り上げたKRISTALは、 ZENIT-3と同時期にリリースされたZENITシリーズの派生モデルで、1961年 〜1962年の期間中、65,433台が製造された。製造期間と台数からもわかる ように、市場に出回った数は決して多くなく、今となってはレアな製品で ある。 KRISTALの特徴は、何と言ってもペンタプリズム部に施されたアールデ コ調のデザインと、結晶焼付け塗装の外装だ。その極めてアクの強いデ ザインは、数あるロシアカメラの中でも突出しており、まるで映画「未 来世紀ブラジル」に出てくる小道具のような雰囲気が漂う。あたかも GITZOの三脚を彷彿とさせる、堅牢な質感だ。多くの種類がリリースされ たZENITシリーズにおいて、これほど押し出しの強いペンタプリズム部を 持つモデルは、唯一KRISTALのみである。 KRISTALはZORKI-5と同様のフィルム巻上げレバーとリワインドボタン を採用している。またヒンジバック部分の開閉メカは、ZORKI-6と同様、 全体が大きく開くタイプとなっている。カメラ本体のデザインも特徴的 であるが、KRISTALはその仕様面でも現在の製品と異なるところが多い。 例えば、シャッターを切るとミラーが上がったまま戻らないので、ファ インダーがブラックアウトした状態となる。これは、ミラーのアップが フィルムの巻き上げ操作時に行われるためだ。さらに、ピントを合わせ るためには絞りを全開にして行なわないと、ファインダーが暗くて良く 見えない。従って、撮影時には一旦絞りを全開にしてピントを合わせた 後、適正絞りを設定するといった手順を踏むことになる。なお、KRISTAL には標準でINDUSTAR-50、50mm/F3.5レンズが搭載される。
メーカー | KMZ社 |
モデル名称 | ZENIT KRISTAL |
製造期間 | 1961 - 1962 |
総生産台数 | 65,433 台 |
掲載モデルの製造年 | 1961 年 |
掲載モデルのシリアル番号 | 61022648 番 |
シャッタースピード | B、1/30、1/60、1/125、1/250、1/500 |
搭載レンズ | INDUSTAR 50mm/F3.5 |
搭載レンズのシリアル番号 | 6189319 |
搭載レンズのマウント形式 | ライカ・スクリューマウント |